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同僚の朱美のミスが、最近急に多くなったのだ。それも、普段だったらやらないような平凡で簡単なミスばかり。
なにかあったのか葉山が聞いても、「ごめんなさい、少し具合が悪くて……」と謝られるばかり。まったく改善しない。
「さあな。プライベートで何かあったんじゃないか?」
上司は不機嫌そうに言った。
「まったく、個人的な感情を仕事に持ち込むとはけしからん」
(あんたも奥さんとケンカしたときこっちに八つ当たりするくせに……)
葉山は賢明にも思ったことを口に出したりしなかった。
(プライベートと言ってもなあ。心当たりがないんだよな)
実は、朱美と葉山は会社に隠して交際をしていた。二人の関係が悪化したことはないし、個人的な悩みを打ち明けられたこともない。何か事情があるのかも知れないが、恋人とはいえ無理やりに理由を聞きだすようなことはしたくなかった。理由もなくスランプになったのなら、理由もなく治るかも知れない。
結局、葉山はもうしばらく様子を見ることにした。
しかし、朱美の状態はますます悪くなっていった。ろくに食べていないのか、だんだんと痩せていった。それどころか何回か急に叫び出し、飲んでいた飲み物をカップごと床に投げ捨てることもあった。
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