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神谷だけではない、道を歩く他の人間も特に騒いでいる様子はない。あの影も、道の隅の闇も俺にしか見えていないんだ。
「は? 何言ってんだ? お前おかしいぞ! いいから運転変われ!」
確かに今の俺の状態では、確実に事故る。俺はおとなしくハンドルを譲った。
「それで、どこへ行けばいいんだ?」
「あの廃墟の遊園地!」
チケット売り場を通り、俺はまっすぐにピエロの看板に向かった。
体力は人並みにあるはずだが、今は少し走っただけですぐに息切れして倒れそうになる。
そして急に表れた黒い人影とぶつかりそうになって慌てて避ける。
そう、通りだけでなく、ベンチの上や柵の影、もっと堂々と道の真ん中にも、大小の黒い影は立っていた。
闇はどんどんと浸食を広め、気をつけないと踏んでしまいそうだ。
異様な光景と、走る苦しさで、俺はなぜか段々と腹が立ってきた。確かに勝手に廃墟へ入り込んだのは悪いが、それってこんな目に遭わなければならないほどのことか? なんで俺だけこんな目に!
ようやく看板の前までたどり着いた。
袖と裾に大きなレースがつき、赤地に白の水玉というど派手な服を着た二人のピエロ。背の高い方は、十字の目をして笑っている。
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