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「ちょ、ちょっと……何のつもり……?」
いきなりキス? 降りろとか言っておいて、大胆ね。ま、まあ、ちょっとばかりイケメンになったことだし、軽く触れる程度だったら、キスしてあげてもかまわないわよ?
間近で香る男らしい体臭に、胸をどきどきさせた友里はそっと目を閉じた。
カシャリ、と音を立てて、友里のシートベルトが外れる。
「え?」
目を開けるとキスどころか、遠野の横顔は硬い。そうしてついでとばかりにドアまで開けられる。
「降りろ」
「ちょっと遠野! 何すんのよ!」
強引に軽トラから降ろされた友里の目の前で、ドアがばたんと閉められた。友里は閉じられたドアをばんばん叩いた。
「信じらんない! ホントに降ろすなんて、どうかしてるんじゃないの?」
声を張り上げる友里に遠野は目もくれず、軽トラを走らせた。
送るからと店から連れ出しておいて、途中で放り出すとか信じられない。母に頼まれたくせに、責任というものが遠野にはないのか?
「遠野のバカタレーーーッ!」
あんなやつ大嫌い。顔も見たくない。ばったり会ったって、絶対に口きいてやらないんだから。
暗闇の中をテールランプが小さくなっていくのを、友里は腹立たしい気分で見送った。
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