記憶喪失

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「…拓…海……」 「雅紀…どうした?どっか怪我したのか?」 「だ、大丈夫だよ……」 俺は口元を抑えながらそっぽ向いて、血を止めるものを探す。すると、突然腕を引かれる。 「ぅわっ…!」 バランスを崩したが、拓海に抱きかかえられ何とかなった。 「お前なぁ、もう少し気をつけ……って、大丈夫か、お前!?」 「……あ。」 バランスを崩した拍子に、手を離していた。そして左手は、血で赤くなっていてまるで殺人でもしたかのような手だった。 「マネージャー!保健の先生呼んできて!!」 「あ、は、はいっ!」 マネージャーと呼ばれた女子生徒は、急いで保健室を出ていった。 「とりあえず、ティッシュで止血するか。ってか歯も折れてるし…どうしたらいいんだ…?」 拓海は、必死に悩んで止血の方法を探している。俺は、貰ったティッシュで止血をしながら口を開く。 「拓海…もう大丈夫だよ?大分血、止まってきたし。」 「お前の大丈夫は信用出来ねぇよ。まだここにいろ。俺の部活のマネージャーが、先生呼びに行ってくれてるから。」 すると、ドアが開いて保健の先生とマネージャーの女子生徒が入ってくる。 「あらあら、大丈夫?どうしたの、これ?」 先生は俺の鼻血に気づいて、近くに来る。 「部活中、ちょっとぼーっとしてて…そしたら、野球部のボールが来てるのに気づかなくて、それで顔面にダイレクトアタックしました。」 「え、野球部のボールがテニス部の使ってるコートまで来るの?」 拓海は疑問に思ったのか、すぐに聞いてきた。 「時々ね、ホームランしない限りこっちに来ないと思うんだけど……。」 「とりあえず、血は大分治まってるから…もう少し安静にしてから部活に戻った方がいいわね。」 「はい、分かりました。」 「そして、あなた達はどうしたの?」 「あ、えっと…こいつが、腕怪我して…どうしたらいいかわかんなかったので…」 見ると、マネージャーの腕は赤く腫れていた。 「かなり腫れてるわね。こっちいらっしゃい、水で冷やしましょう。」 「は、はい!」 「じゃあ、俺は部活戻るから。大丈夫になったら来いよ?」 「分かりました!ありがとうございます!!」 拓海はマネージャーに声をかけて、保健室を出ていく。 「あ、拓海!待って、俺も行く。…ぁ…失礼しました!」 俺は、拓海を追いかけて保健室を後にした。
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