1人が本棚に入れています
本棚に追加
「…拓…海……」
「雅紀…どうした?どっか怪我したのか?」
「だ、大丈夫だよ……」
俺は口元を抑えながらそっぽ向いて、血を止めるものを探す。すると、突然腕を引かれる。
「ぅわっ…!」
バランスを崩したが、拓海に抱きかかえられ何とかなった。
「お前なぁ、もう少し気をつけ……って、大丈夫か、お前!?」
「……あ。」
バランスを崩した拍子に、手を離していた。そして左手は、血で赤くなっていてまるで殺人でもしたかのような手だった。
「マネージャー!保健の先生呼んできて!!」
「あ、は、はいっ!」
マネージャーと呼ばれた女子生徒は、急いで保健室を出ていった。
「とりあえず、ティッシュで止血するか。ってか歯も折れてるし…どうしたらいいんだ…?」
拓海は、必死に悩んで止血の方法を探している。俺は、貰ったティッシュで止血をしながら口を開く。
「拓海…もう大丈夫だよ?大分血、止まってきたし。」
「お前の大丈夫は信用出来ねぇよ。まだここにいろ。俺の部活のマネージャーが、先生呼びに行ってくれてるから。」
すると、ドアが開いて保健の先生とマネージャーの女子生徒が入ってくる。
「あらあら、大丈夫?どうしたの、これ?」
先生は俺の鼻血に気づいて、近くに来る。
「部活中、ちょっとぼーっとしてて…そしたら、野球部のボールが来てるのに気づかなくて、それで顔面にダイレクトアタックしました。」
「え、野球部のボールがテニス部の使ってるコートまで来るの?」
拓海は疑問に思ったのか、すぐに聞いてきた。
「時々ね、ホームランしない限りこっちに来ないと思うんだけど……。」
「とりあえず、血は大分治まってるから…もう少し安静にしてから部活に戻った方がいいわね。」
「はい、分かりました。」
「そして、あなた達はどうしたの?」
「あ、えっと…こいつが、腕怪我して…どうしたらいいかわかんなかったので…」
見ると、マネージャーの腕は赤く腫れていた。
「かなり腫れてるわね。こっちいらっしゃい、水で冷やしましょう。」
「は、はい!」
「じゃあ、俺は部活戻るから。大丈夫になったら来いよ?」
「分かりました!ありがとうございます!!」
拓海はマネージャーに声をかけて、保健室を出ていく。
「あ、拓海!待って、俺も行く。…ぁ…失礼しました!」
俺は、拓海を追いかけて保健室を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!