記憶喪失

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「拓海っ!待って!!」 「え、雅紀!?お前、もう顔痛くねぇの?」 「いや、まだ若干痛いけど…大丈夫!」 「大丈夫じゃねぇじゃん!!」 そんなノリのいい会話をしながら、廊下を歩く。やっぱり拓海と話すの楽しいな。 「そういやお前、部活何時に終わるの?」 「うーんと、いつも7時に終わるよ。」 「じゃあ、今日は一緒に帰ろうぜ!久しぶりに!」 「……!うん!!」 嬉しくて仕方なかった。拓海は男子バスケ部、俺は硬式テニス部で違う部活。それに、いつも同じ部活の人達と帰るから拓海と帰る機会がなかったが、こうして本人に誘ってもらえることが何よりも嬉しかった。 「じゃあ、俺は部活終わったらテニス部が使ってるコート近くで待ってる。」 「うん。できるだけ早く終わらせるね!」 こうして、俺は拓海と一旦別れ、部活動に戻った。そして、部活を終えて拓海と一緒に帰宅する。 「でさ、その一年すげー可笑しいの!今度動画にして送ってやる!」 「本当!?見たい!バスケ部は個性強くて面白そうだよね。」 部活動であったこと、勉強・進学のこと、趣味のことなどの世間話をしながらいつもの通学路を歩く。 「ってかさ、今からどっかで食べに行かね?ファミレスとかさ!」 「いいね!行こう行こう!!久しぶりだね、拓海と外食なんて。」 「たまにはな!最近全然お前と遊んだり、どこかで食べたり出来てなかったし…こういう時にこそ、行っときたいじゃん!」 「…拓海……。」 知らなかった。拓海も俺とのこと考えてくれてたんだ。自分だけだと思ってたから、余計に嬉しさがこみ上げてきた。 「ありがとう!嬉しい!!」 「……っ!」 拓海は、俺の顔を見たと思いきや、すぐに顔をそらす。 「拓海…?」 「あ…ごめん、何でもない。」 「…なら、いいけど。あ、親に連絡入れとかないと。」 「そ、そうだな。俺も入れないと。」 そして、二人とも両親に連絡を入れる。 「学校から一番近いファミレスでいいよな?」 「うん。近いっていってもここから徒歩50分くらいかかるけどね。」 そして工事現場前の所を通った時。 「雅紀っ!」 「……?何?」 拓海が呼び止めるなんて珍しい。そう思いながら拓海は続ける。 「あの…俺……」 その時、ガランガランと何か音がした。上を見ると、工事現場の鉄柱が数本、拓海の真下を目掛けていた。 「危ないっ!」 俺は咄嗟に駆け出し、拓海を突き飛ばした。そこからは、全く覚えていない。
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