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感覚が鈍る……感受性の低下って奴の原因、その一番手は……年齢に依るものだ。
俺がこの状況で真っ先に思い浮かんだのは、自分の年齢からくる能力の低下って奴だった。
……つまり……老いだ……。
そこまで明確な言葉を思い描いて、俺は頭を振ってそれを否定した。
確かに俺は、この間39歳になった紛う事無き見事なアラフォーだ。
若いとは到底言える事無く、それを実感させる多数の症状が俺にも現れている。
……例えば、朝が辛くて起きられないとか。
……例えば、疲労の抜け具合が以前よりも遅くなっているだとか。
……例えば、ベッドに敷いてある布団からは独特の臭いを感じるであるとか。
くっ……。
普段は見て見ぬ様に、気付いても考えない様にして来た事を改めて思い描き、俺は自傷行為的ダメージを心に負っていた。
もしもこれが、今回魔王城に仕組まれた罠だとしたら……やるな、魔王!
単純な攻撃力では敵わないと見て、搦手で攻撃して来たという訳だ。
―――なんてな。
そんな姑息な精神攻撃、今までにはされなかった。
今まで使われなかった作戦だからと言ってこれからも使われないとは限らないが、それでも今まではそう言った間接的な攻撃は無かった。
そこに俺はこの魔王城の……魔王や魔神将たちの矜持と言ったものを感じていたんだ。
もっともそれは、俺が勝手に都合よく思い描いているものに他ならないんだけどな。
兎も角、今更この魔王城に潜む住人達が、正攻法では敵わないからと卑屈な攻撃に方針転換して来るとは思えなかった。
ただしだからと言って、今の状況にどういった意味があるのかは分からない。
それでも分からないからと言って、このまま魔王城を後にする……と言う事も出来ない。
俺は改めて、意を決して魔王城内を進んでいった。
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