勇敢の紋章

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 ―――そりゃあ、そうだろう。  この技は、発動する事によって俺の能力……力や防御力、瞬発力から動体視力から魔力まで、全ての身体能力を一時的に底上げするものだからな。  正直に言って、この技を発動させるのはこの場では避けたかった。  俺の一挙手一投足を戦いもせずに見つめている奴らが、この部屋には4人もいるんだからな。  それでもこれ以上、この戦いを長引かせるのは得策じゃないって思ったんだ。  一つは、思った以上に3魔神将の攻撃が強力だと言う事。    これを使わなくっても、いずれは3人の魔神将を倒す事が出来るかもしれない。  それでもそれに掛かる体力、気力、魔力の消耗は無視出来ないものとなっているだろうな。  そして二つ目は、この戦いが終わればそのまま帰れるって保証が無いって事だ。  何せ、体調万全の奴らが4人も控えているんだ。敵は3魔神将だけじゃない。  目の前の敵を倒す事が出来たって、それで残っている4人の魔族と戦えないんじゃあ意味がないからな。  敢えて言うが、俺はこんな所で死ぬつもりなんて更々無い。 「それじゃあ……今度はこっちが行くぞ」  俺はそれだけを呟くと、自らを竜巻と化して奴らの中へと斬り込んでいった。 「う……うおっ!」 「ぐがっ!?」 「なん……だとっ!?」  一様に目を見開く魔神将たちなど構いもせず、俺は大きく上がった身体能力を以て奴らに攻撃を仕掛けた。  未だ動き出せずにいた風魔神将アネモスの巨斧を弾き飛ばし。  驚きながらも動き出そうとした空魔神将ウラノスには、俺の雷撃魔法を喰らわせてやり。    大刀を振り上げようと動き出した海魔神将ゼーにはそれをさせず、俺は足で刀の背を踏みつけて奴の首元へ剣を突きつけた。  奴らの眼には、それらの事が一瞬で起こったと見えただろう。  気付けば自分の得物が手から弾き飛ばされ、知らず雷撃を無防備に受けてしまい、武器を封じられて目の前に剣を突きつけられているんだ。  圧倒的な結果と言えば、正しくこれ以上は無いだろうな。
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