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俺の足元には、3つの紫色をした炎が立ち上っている。
その炎も徐々に弱まり、間を置かずに消え去って残りは灰だけとなるだろう。
それは言うまでもなく……3魔神将の残り火だった。
「さて……残りの3魔神将はこの通り倒した訳だが……次はお前達が相手と言う訳か?」
俺は剣先を向けて、高段に居て今の一部始終を見ていたナダ達にそう問いかけた。
今俺が発動させている「勇敢の紋章」の効力は、まだまだ持つだろう。少なくとも、この場にいるナダ達4人の魔族を倒すだけの時間はたっぷりとある。
ただ俺も、随分と年を取り経験を得てきた。
その過程で、少なからず考えも変わってきている。
血気盛んな若かりし頃ならともかく、今は魔族だという理由だけで襲い掛かろうとは思っていなかった。
「……いや。この場でお主と殺り合おうとは思ってはおらぬ」
そして案の定、ナダからは不戦の答が返って来たんだ。
そう言えば3魔神将と戦う前に、魔王の指示で戦わないって言う事を言っていたな。
「勿論それは、我が主の指示なのである。だがそれを差し置いても、今のお主と殺りおうて勝てるとは到底思えぬからなのである」
うん、冷静な判断だな。
今の俺と殺り合えるとすれば、それは恐らく……魔王だけだろう。
「そうか……。なら、俺はどうすれば良い? このまま進む俺を黙って見逃がしてくれるのか? それとも、今日は大人しく帰っても良いのか?」
奴らが何も手を出さないって言うんなら、俺はこのまま帰る方を選択したい処だ。
既に一戦終えた後だし、紋章の力も使っちまった。
万全を期すってんなら、このまま帰って休養を取りたい処なんだ。
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