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それが許されないってんなら、このまま魔王の元へ行くというのもありだ。
戦闘になればすぐに決着はつかないかもしれないが、それでも今の俺なら短期決戦も望める。
例えナダ達が立ち塞がるとしても、こいつらを可能な限り速やかに倒し、そのまま魔王の間へと向かうって選択肢も取れるというもんだ。
「……いや、どちらも否である」
でも返って来た答えは、そのどちらにも当て嵌まらないらしかった。
俺が疑問を浮かべて呆けていると、その答えが俺の目にも分かるように示されたんだ。
大きな軋み音と共に奴らの背後にあった扉が開き、そこから一人の人物が出現する事によって。
「この……圧力は……!」
そして俺はその人物から発せられる威圧感によって、思わず絶句を余儀なくされていたんだ。
この感じられる力は、「勇敢の紋章」を発動させる前の俺よりも……強いぞ。
そして紋章の力を発動している今の状態であっても、僅かに俺の方が上回っている程度でしかない。
そう……ナダの答えはこういう事だったんだ。
進む必要はない。帰る事も無い。
何せ魔王が直々に、階下に降りて来たんだからな。
しかし……。
―――魔王とは……これ程の力!?
俺は、完全に自分の目算が甘かった事を認めていた。
紋章の力があれば、魔王でさえ圧倒出来ると考えていたんだ。
だからこその切り札。だからこその取って置きだった。
だが、現実はどうだ?
万全の状態で臨んでも、恐らくは互角の戦いが繰り広げられるのは想像に難くなかったんだ。
俺が必死で奴との戦闘をシミュレートしている間に、魔王と思われる人物が俺の正面にまで進み出て来た。
「……お前が……魔王だって言うのか……!?」
そんな魔王を見て、俺は漸くそれだけを絞り出す事が出来たんだった……。
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