そして勇者は先生に……

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『先生―――……せんせーい……。また意識が何処かへ行ってますよ―――』 「いや、ちゃんと聞いてるって……」  再びイルマから注意されてしまった。  今俺は、先にも述べた通り魔界に居る。  それでもこうして、人界に居るイルマと会話をする事が出来ているのだ。  これは偏に、超レアアイテム「通信石」のお蔭であった。  通信石は、元々はこぶし大の大きさを持つ1つの鉱石だ。  勿論、このままでは離れた場所の相手と通話する事なんて出来やしない。  この鉱石を「天界」のある技術で2つに割る。  そうする事でこの鉱石は互いに引き合い、呼び合い、通話することが可能となるのだ。  では何故、今まで俺がこれを使わなかったのか?  これまでに一度も「通信石」の話が出なかったのか?  そんな事は、聞くまでもなく言うまでもない。  ―――相手が……居なかったからな……。  おっと、やばい。  秋を思わせる日差しが眩しいぜ。  思わず目じりに、涙が溜まっちまった。
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