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『もう……通信を切りますよ? 先生には大した事が無いかも知れませんが、私には維持するのが結構大変なんですからね』
むぅ……また思いを馳せてしまっていたか。
確かに、通信石の使用には魔力が必要となる。
それが長距離ともなれば、その消費量は少なくない。
駆け出しと言っても過言じゃないイルマには、この距離の通話を長時間保つのは一苦労だろう。
それにしても……。
こんな調子じゃあ、何時まで経ってもイルマの小言が収まらないな。
それどころかこれじゃあ、どっちが生徒で先生か分かったもんじゃない。
「……それで? ドルフの村の様子はどうなんだ?」
気を取り直した俺は、改めてイルマにそう質問した。
画面の中のイルマは、一つ小さなため息をついてもう一度説明を繰り返してくれたんだった。
出会ったばかりの頃とは違い、今のイルマは随分としっかりしている。
その発言も、そしてその立ち居振る舞いも。
戦士のクリーク、魔女のソルシエ、武闘家のダレン……そして僧侶のイルマ。
このメンバーが、今俺が受け持っている新米冒険者の面々だ。
その中でもこのイルマは、本当に言葉数が少なく臆病で、引っ込み思案だという印象がぬぐえなかったし実際にそうだった。
それが今では、このパーティの中核にして纏め役……。いや―――……人って変われば変わるものだな。
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