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『……あの……それで先生? ちゃんと……食事は摂れてますか? 掃除や洗濯はまめにしてるんでしょうか?』
少し考え込んでいた俺に、イルマがどこか恥ずかしそうにそう聞いて来た。
だがこの質問は、年長者である俺に対して礼を失していると言っても過言ではない。
「なんだ、イルマ。ちゃんと飯は食ってるし掃除や洗濯も問題ないぞ。大体俺は、お前達に出会う前から一人でちゃんと暮らして来たんだ。心配なんか無用だぞ」
そう……俺は今までたった一人で……そう……たった一人で……。
いかん、ネガティブな気分になって来た。
ともかく、一人でちゃんと生活して来たんだ。
今更遥か年下のイルマに心配される様な事は無い。
『でも先生、雑貨屋「コンビニ」で買った物ばかりじゃなく、栄養のバランスも考えて自炊しなきゃだめですよ? それに掃除や洗濯も纏めてじゃ無くてちゃんとまめに行わないといけないんですからね』
むぅ……イルマの言う事も指摘も、もっともであり図星を突いていた。
そもそも男所帯で、そんなに家事をまめに行う奴なんかいるもんか。
「仕方ないんだよ。俺にも色々やらなきゃいけない事があるし、だからって家事をしてくれる奴なんて今までイルマくらいしかいなかったからな」
やや捨て鉢にそう言い切った俺に、当のイルマは怒るどころか僅かに頬を赤らめて反論してきた。
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