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俯いていたハルカがぱっと顔を上げる。
「俺は佐久間のことよく知らないけど、俺でよければ協力するよ」
「本当に……?」
「困っている栄田を放ってもおけないし、佐久間の安否も気になるからね。何事もないといいけど」
「……うん。それに、不安でもあるんだ。佐久間くんはモテるから、その、」
「浮気とか? きみみたいな恋人を差し置いて、それはないだろう。どうする? 職場には行ってみた? 家は?」
「いや……彼はそういうのを嫌うから」
「なら、行こう。これだけ心配させるのが悪いんだ。行きにくいなら俺が一緒に行ってあげるよ」
「そこまでしなくても」
「俺も心配だからな」
ハルカは少し考えて、「じゃあ、お願いします」と頭を下げた。
「ありがとう。神崎くん、優しいね。高校の時にもっと仲良くなれてたら良かったのに」
神崎は席を立ってハルカの後ろに回った。形のいい後頭部、細くて長い首、艶のある茶髪。神崎はハルカの両肩を慰めるように撫でた。これがすべて自分のものになるなら、いくらでも優しくできる。
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