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 神崎は医療従事者なので民間企業の評判に疎いが、そんな彼でもよく耳にする証券会社だった。佐久間は中々優秀なのかもしれない。ハルカ曰く、「残業が多くて仕事が終わる時間が定かでないので、迎えに来られても相手にできないから会社には来るな」と釘を刺されている、とのことだ。 「僕が連絡をしたら、どんなに離れていても秀一が僕のところへ来てくれるんだ」 「じゃあ、一度も家にも行ったことがないの?」 「うん」  一般的には終業時刻を迎えている時間だ。腕時計は午後五時半を回っていたが、夏なのでまだ陽は高く、遠目で見てもよほど視力が悪くなければ人物の特定はできる。神崎とハルカは大通りを挟んでビルの向かいにあるフランチャイズカフェで佐久間が出て来るのを待った。 「なんか、尾行してるみたいで良い気分ではないね」 「仕方ないだろう。ずっと連絡がつかないんだろ?」 「まだ仕事中かもしれないし、いつ終わるか分からない」 「終わるまで待てばいい」  そわそわと貧乏ゆすりをしていたハルカは「やっぱり出よう」と席を立った。 「こんな下らないことに神崎くんを付き合わせられないし、秀一を疑いたくない」 「でも、どうしても連絡を取りたいんだろう」 「たった一週間や二週間連絡が取れないくらいで、ウジウジする僕が女々しいんだよ。神崎くん、ごめんね。親身になってくれてありがとう」  足早に出ようとするハルカを神崎は慌てて追いかけた。肩を掴もうとした時、ハルカが突然立ち止まる。
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