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 病室を出た秀一と志摩は、院内のカフェテリアに入った。二人掛けのテーブルで向き合って座る。簡単な挨拶のあと、秀一はその後の体の具合を聞かれて、順調であることと世話になった礼を述べておいた。注文しておいたコーヒーが届いてから、志摩が病室での秀一の質問に答えた。 「俺と正臣……神崎は、幼馴染でね。分野は違うが同じ医師という立場もあって、この歳になっても交流がある」  秀一はそれには驚かなかった。先ほどの志摩の神崎への接し方を見るとその類だろうと思っていたからだ。どちらかというと神崎が子ども扱いされているような印象を受けたのが驚きだったが、それも「俺のほうが三つ上だから弟みたいなものだ」と付け加えられて、納得した。更に「それならば」と抱いた疑問に、志摩は読んでいたかのように答えた。 「すっかりもとの顔に戻ったな」  やはり、志摩は神崎の企みを知っていた。秀一は答えられなかった。志摩は歯の矯正の際、申し分ない治療をしてくれたので感謝しているし、尊敬もしていたのだ。気さくで優しく、安心して任せられた。だから実は神崎と組んでいた、もしくは知っていて素知らぬふりをしていたのかと思うとがっかりしたし、若干軽蔑すらした。 「……どこからどこまで、知ってるんですか?」  志摩は煙草に火をつけた。椅子の背もたれに肘を置いて、けだるそうにする。歯科医院に通院していた頃はもっと柔らかいイメージがあったが、今のどこか粗野な態度を見る限りこれが素の姿なのだろう。
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