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「お前さんがバイク事故に遭って、正臣の医院に運ばれた直後だよ。正臣から久々に連絡があって、診て欲しい患者がいると頼まれてね。その時に、正臣の考えを知った」
と、すれば、神崎が秀一の顔をハルカの顔に整形することは最初から決めていたのだろう。
「最初はさ、冗談だと思ってたんだ、本当に。だって骨格も構造も違うものを、違和感なく同一人物に整形するなんてできないと思ってた。普通はどっかで食い違いが出るはずだ。でも整形後のお前の顔は、栄田ハルカそのものでよ、初めて幼馴染を恐ろしく思ったね」
「……ハルカのことも知ってるんですか」
「あ、顔だけだぜ。写真でしか知らない」
それでもハルカのことと神崎の計画も知っていたということは、秀一がハルカにしたことも聞いているはずだ。
「悪かったな。知らない振りしててよ」
「……俺が志摩先生でも、そうすると思います」
「散々だったな。バイク事故に遭ってからそんなに経ってないのに今回も巻き込まれて」
「そういう運命なんです。それだけのことを俺はしたので」
「俺はよ、運命とか神だの仏だの、そういうもんは信じないほうだけど、もし本当にそういうのがあるとしたら、お前はもう充分罰を受けた。不運を全部が全部、自分のせいにするな」
そういう風に言ってくれたのは初めてだった。秀一は俯いて、少しだけ泣きそうになった。
「……今度は正臣か」
と、呟いた志摩の言葉にゆっくり顔を上げる。
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