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「……」
「万人からじゃない。特定の誰かから愛されたい。自分が愛している人間に愛されたい。あいつが初めて好きになった他人が栄田だったからな。余計に振り向いて欲しくて、それが叶わなくて異常に執着したんだろ」
秀一は同窓会でハルカを見かけた時、音楽室でピアノを弾くハルカを見つめる神崎の姿を思い出した。神崎のあの熱い視線が自分に向けられたものだったらよかったのに、叶わなかったことに嫉妬した。秀一と神崎は願望も動機も同じだった。神崎はそれを知ったから、秀一を放っておけなくなったのだ。
――一生俺に尽くせ。そうすればお前を愛してやる。――
「色々あったお前らだ。佐久間に無理に正臣を頼むとは言わない。変わらず愛してやってくれとも言えない。でも、少しでもあいつを気の毒に思ってくれるなら、そのあいだだけは傍にいてやってくれないか」
考えるまでもなく、秀一ははっきり答えた。
「大丈夫です。俺も他の人にあいつを任せたくないので」
「……ありがとうな」
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