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「……嬉しかったんだよ……好きだって言ってくれて……。声を掛けてくれて、覚えてくれてて、嬉しかった……。今まで誰とも恋人関係になったことがなかったから、彼が僕にとって全部初めてだった。……なのに……」 「お前を愛してくれる奴は他にもいる」  俺だって、と続けようとしたところを、手を振り払われた。 「僕には何もない。友達も恋人も」 「違う、何もないなんてことはない」 「もう駄目だ、信じられないよ、……生きてたって仕方がない」  誰かが告げ口をしたのか、警備員がふたりに駆け寄ってきた。 「栄田、とにかく……」  ハルカは宥める神崎を振り切って、フェンスを乗り越えた。 「やめろ! 戻れ!」 「きみ! そっちは駄目だ!」 「神崎くん、ありがとう。さようなら」  そしてハルカは頬に涙の筋を何本も残したまま、暗闇の底へ姿を消した。
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