第三難、王子様

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【第1王子チース視点ver.】 僕は任務を遂行するためローゼ卿の屋敷に偵察に来ていた。 最近孤児の女の子たちがいなくなっていると教会から連絡があったからだ。 今まで任務はずっと父上の手伝いばかりばかりだったけど、偵察くらいならと父上から許可を得ることが出来た。初任務でとてもワクワクするし緊張もする。 今は夜の9時くらいで僕がここに着いたのが夕方4時頃だから、かれこれ5時間ほど監視している。 はあ、でも僕の任務は偵察。 何か起きたとしても、僕は何もしちゃいけない。 あくまで、状況確認して、その報告のみ。 ああ、つまらないなあ……5時間くらいずっといるけど何も変わったことがない…… いや、1つのおんぼろ馬車は来た。けど、死角で誰が来たかわからない。まあ、怪しかったけど、特に異変はないようだったし… って、まさかあの馬車の中に女の子が隠されていたりしないよね… そうだったら、僕は、その女の子を……見放してしまうことになるのかな。 ああ……偵察だなんてしなければ良かったなあ… こんな悶々とするだなんて…… ガラガラ あ、おんぼろ馬車が出ていった…… むむむぅ、もしあの馬車が女の子を連れてきていて、用が終わって帰るところだったら…… ああ、とりあえずあの馬車は、他の者に事情聴取してもらおう。 とは言っても、父上が僕に与えてくれたのは15人。 偵察にしては多い人数なのかな? いや、でも偵察とは言っても、今目の前で救える可能性がある人がいるなら、任務は偵察だから!だなんて言ってられないよね… 「アザレア、兵4人にあの馬車の者の事情聴取を頼みたい」 「御意」 銀髪の長い髪を後ろで高く結んだアザレアは 僕の隣から後ろで待機している兵士達の方へ移動した。 アザレアが今隣にいないのを実感すると、段々僕に不安と恐怖が襲ってきた。 大丈夫、アザレアがいなくても 僕は自分で、決定して行動できる…… 時間がないんだ。刻一刻と中で大変なことになっているかもしれないんだ。 アザレアが来るまで待とうか…否、否、それではダメだ。 そう時間がないんだ!! 大丈夫、おどおどしないで凛とできる…… 大丈夫、口だけだなんて言わせない…… 大丈夫、僕だって、やれば出来r… パリン え、? 僕が普段通り不安になった時にする自己暗示をしていると、突然、何かが割れる音がして、 音の方を見上げると、上半身が露わになっていた綺麗なエメラルドグリーンの髪をした子が、2階の大窓から飛び降りようとしていた。 「……ああ…なんてきれいな人……」 僕は暫く固まってしまっていた。 とても美しい身でありながら、空から天使が舞い降りたと言うには程遠い勇猛果敢な様子に、 僕は見惚れて動けなくなっていた。 すると、突如ローゼ卿が現れ、その子の首輪を掴んだ。 あ、まさか、これ、 僕の目の前で今、、 た、た、助けなきゃ、、 目の前で起こってることは、助けなきゃいけない事だ あ、う、動け、、僕は 父上が国が自慢できるような王子様になるんだ!!! ローゼ卿がその子を連れていこうと鎖を引っ張り歩き始めようとした。 それと同時に、僕はもしもの時にとバラ庭園の影に隠れていた伏兵に、ローゼ卿に麻酔銃を打つよう合図した。 よし!ぼ、僕にもできたぞ! 指示しただけだけど、僕の指示に皆動いてくれるんだ! このまま保護対象を保護して、ローゼ卿の屋敷の家宅捜索だ! 「みんな!僕に子供は任せて!家とローゼ卿のことは任せた!」 「御意!王子殿!!」 僕は急いで寒そうに呆然と立っている子の方へと向かった。 「大丈夫かい?!!君!!!」 ━━━━━━ ━━━ ━ それから窓から飛び下りてきた美しい少年と色々話した。 彼はとても面白い子で、僕に見たことの無いような世界を見せてくれているようだった。 彼といると、心がバクバクするけど、 きっとこれは僕にこういう友達みたいな子がいなかったからで、僕の身体が喜んでいるんだと思う。 初めは女の子と思ってしまったけど、男の子で僕より2つ年下。 僕には4つ下の弟がいるから、弟がもう1人増えた感じなのかな…とにかく僕は今嬉しい… 城の外の人とはあまり話したことないからとても新鮮だし、彼は、美しくて可愛くて面白くてとても魅力的な子だ。 そんな彼が僕に名前をつけてとせがんだ。 変わった事情があるようだけど、今日は僕のお城で一緒にお泊まり会だ。 誰かをうちに呼んだ事なんて更々ないから本当に楽しみだ。 因みに、彼の名はアネモネと名付けてみた。 喜んでくれてるようで嬉しい そしたら彼は、あだ名で呼び合おうって提案してくれた。僕の名付けた名前が照れ臭いなんて言ってたけど、そんなことよりあだ名を呼び合える人が出来て僕はとても嬉しい 「あーくん」って呼んでみたら「チーくん」って返してくれた。 僕の方が年上だから僕のことをあだ名で呼びたくないって言ってたんだけど、僕がお願いしたら照れ臭そうに良いよって言ってくれたんだ。 その時とても心の奥がキューってなって楽しかった。 きっと彼とはずっと特別な関係になる気がするんだ。 彼を想うと楽しくなる。幸せになるんだ。 だから、彼は僕に……「希望」を与えてくれるんだと思う。 【第1王子チース視点end】
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