第五章:覚悟と現実を

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 デニスがそこまでだ、と話を切り替えた。 「蛮族共は我々が近付きたくない場所に陣取ったと言うことは間違いない。これだけの大きさの城だ、恐らく敵本隊の司令部にするはずだが」  ポーン、とデニスが声を掛ける。 「奴らの数はどれくらいだ?」  隊長の問いに、ポーンは首を左右に振り、城の上で指を3本、4本と2回に分けて立てた。 「そうか、思ったよりも数が少ないな」 「………何でそれだけで分かるんですか」  思わず出た心の声にデニスが相田に顔を向けたが、相田はすぐに何でもありませんと答える。 「シリア。騎士団が到着するまでの時間は?」  デニスの問いに彼女は顎に指を這わせる。 「早くてあと1日半といったところかと。さすがに2個騎士団と考えると足が遅くなりますね」 「村を攻めることに成功した奴らは、必ず援軍を呼ぶはずだ」  そしてこのままでは蛮族の方が早く援軍と到着する。デニスの判断に相田以外の全員が頷いた。 「本隊が到着した場合………村の人達はどうなりますか?」  今まで作戦に対して発言していなかった相田が小さく手を上げて呟くと、シリア達は相田を一度見てからデニスに判断を委ねる。  デニスはゆっくりと瞬きし、腕を組んだまま重く口を開く。 「………奴らは人間の捕虜をとらない。恐らく王国への見せしめとして1人残さず殺すだろう」 「だが奴らはまだそれを実行していないだろうね。恐らく、援軍で来る者の指示を待っているのさ」  隊長だけには、とシリアも相田に捕捉するように説明した。  だが結末が分かっていても、相田には選べる行動も実行できる能力すらない。さらに心の中が空洞になる感覚が相田に襲いかかる。  そこに相田の肩に大きな手が不愛想に置かれた。 「初陣だけでも大変だってぇのに、こんな胸糞悪い話はさすがに辛いだろうよ。心配するな、俺が全員ぶっ殺してやるぜ」  ザイアスが大きく舌打ちをする。彼なりに相田に気を遣っての発言だった。
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