第五章:覚悟と現実を

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 デニスが話を続ける。 「蛮族共の本拠地になっている古城を探り、状況を把握。援軍が到着しておらず、かつポーンの言うように敵の数が少ないのであれば、奇襲を行い先遣隊を殲滅する」  先遣隊が失敗したとあれば、蛮族達の援軍が引き返す可能性がある。デニスは一旦会話を切り、相田の顔を一瞬だが見上げた。 「………さらに、可能であれば生存者を救出する」  地獄の底に吊られた1本の蜘蛛の糸、細い閃光が残っていた。  デニスは全員に確認するように口を開く。 「我々の主力よりも敵の本隊の方が到着が早いことは明らかだ。この機を逃すと我が国の領土がさらに侵される恐れがある。だが判断は間違えるな、奇襲を行うのは条件が揃えばの話だ」 「「「了解」」」  全員に目を配ったデニスだったが、どちらかといえばその言葉は相田に向けたものだった。それでも現状では十分すぎるほどの希望だった。  不満など言えるわけがない。相田もデニスの視線に頷いた。 「各自移動準備。村までは馬で移動するが、そこから先は徒歩だ」  準備といっても特にすることはない。相田は後れを取るまいと、急いで馬に(またが)った。  腕時計の短針と長針があと1時間程度でちょうど真上で重なる。  2つの月の大半がかけている。  奇襲の条件は揃っていた。
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