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序 章:謁見の間にて
「俺はなぁ! 好きでこんな城に来てるんじゃぁないんだよっ!」
自分でも驚くように血液が沸騰し、青年は小さな唾を飛ばしながら吹っ切れた。
異世界へと飛ばされてきた自分を受け入れてくれた故郷とも言える村を実験材料として焼かれた挙句、村の人達を人質のように扱って自分を捕まえにきたことを青年は忘れなかった。その上、眼前に座る王の権力者としての態度と横柄な言葉には、これ以上我慢できなかった。
青年は両腕を後ろに縛られたままの体で、バランスをとりながら何とか立ち上がると鼻の根元にしわを集め、正面の男をまるで親の敵のように睨みつける。
自分の大声で、今まで我慢していた感情が一気に堰を破る。
「命を救われた村を焼かれ、家族のように接してくれた人達を人質にして、『力を貸せ』だぁ!? どれだけあんたが偉い人間だが、何だが知らねぇが、人として何か間違ってんじゃねぇのかい!? あぁ?」
不満や怒りはあったものの、無駄に波風を断たせないようにと気を遣ってきたが、青年は後のことはもう考えていなかった。
「くそっ! こんな………縄なんかぁっ!」
両手に縛られた縄を外そうと青年は左右の手首を擦り合わせ、さらに両肩を左右にうねらせたが、縄はびくともしない。それどころか、青年は自分の体に何かが圧し掛かってきた感覚に襲われた。
左右を見ると、謁見の間に並んだ者達の間に赤いローブを纏った魔法使いが立ち、両手を青年に向けながら何かの呪文を唱えていた。恐らくは相手の動きを封じる類の魔法なのだろう。青年は自分の両肩を透明人間に握られているかのような感覚だった。
「力になれぬならば、死んでもらうしかない。我が国の兵を殺めたのだ。死刑は免れぬ」
「ああ、そうかよ………。そっちからけしかけておいて………本当に、は、腹が立つことばかりだぜ。」
罵声を浴びせる青年に、赤い絨毯の奥で堂々と座る王。
そして青年もそれに負けじと1歩を踏み出した。
左右に並ぶ家臣の列からさらに2人の魔法使いが割って入り、呪文が重ねられる。今度は誰かが両足にしがみついているかのような感覚に陥った。
青年は歯を食いしばって重い手足を左右に動かす。死ぬほどの重さではないが、数歩進むだけで息が切れ始め、足腰にはかなりきていた。
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