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弓村弥生
ここは西花町という田舎の町。
駅の奥には山が見える。駅前から少し歩けば田んぼがある。
そんな西花に在る、唯一無二の創作者たち。
それは、たった三人の高校生だった。
駅の周りに何も無いがために、典型的な高校生像からはかけ離れされた彼ら。
それぞれの才がいま、ぶつかり合う--!
(--、なぁんてね)
こんなキャッチコピーを考えてみるだけで、弓村弥生の心はいつもの閉塞感をほんの一瞬だけ忘れることができた。
六月のある放課後。西花高校の図書室には、今は弓村弥生の他に誰もいなかった。
集中するには静かすぎるほどの無音の中で、唯一の利用者の弥生は、空気の中に溶け込んでいるかのような錯覚を覚えた。
四人以上座れるテーブルがいくつも並ぶ閲覧用のスペース。その隅っこの、図書室のいちばん端の席。
古い本が並ぶホコリっぽい棚の一角からは離れ、弥生は特等席に座っていた。
手元を見ると、何枚もの原稿用紙につづられた文章の束が連続して重なっている。
蒼太郎、望美、そして弥生。
物語の中に自分達の名前が出てくる度に、弥生は胸を高鳴らせながら続きを見ていた。
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