緩序楽章 黄金の指輪

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   …  ……  目を開くと眠っていた筈の神流(かんな)は、見覚えの全くない林のような場所に立っていた。  朝陽が無理矢理に神流(かんな)を眠気からの覚醒を促した。夢の事は何も覚えていなかった。  ・・・・・どう考えても景色がおかしい、寝ていた筈なのに立っているし外だ。 見たことも無い樹木や風景が目の前に幻想的に拡がっている。  何もかもが、おかしいが此所はそもそも日本なのだろうか?  タイムスリップや異世界の可能性も十分ある、誰かドッキリだと言って欲しい。   神流(かんな)には現実を受け入れるしか道が無さそうだ。 「本当に何処までが夢なんだ?」  頬をつねっても痛い。ケツをつねっても痛い。  俺が何か悪い事をしたのか?   専務のハゲ頭を笑ったからか?   サボってた後輩にブーデーと悪口を言ったからか? コンビニでビニールを余分に貰ったからか?   どうしてなんだ?  「誰が何の為にこんな事をしたのか、天災が起きたのか全く何も解らないが、家からも追い出すとかどんだけモラハラなんだよ!」  神流(かんな)が怒りながら周囲を見渡しても自販機は勿論、家も道すら無い。  見える範囲に建物も生き物も存在しない。 「……どんだけ~」     
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