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寝坊グセの自覚はある。生前は、よくそのことで配下たちに怒られたものだ。
しかし、だからと言ってそんな長い時間寝過ごすなんてことがあるのだろうか。
「復活の秘術を甘く考えていたということか? それとも単にオレ様が寝坊してしまっただけなのか?」
うんうん唸っていると、遠くから鐘の音が聞こえてくることに気がついた。
自分が耳元で聞いたのは、あの鐘の音だったのだろうか。それにしては、音が小さいような気がする。あの時聞いたのは、もっと地の底から鳴り響くような重く、そして大きい音だった。
疑問は浮かぶが、ここにいても何も始まらない。音の正体を確かめるべく、ビャコウは鐘が鳴る方へと歩を進めた。
茂みをかき分けて行くと、途中から整備された歩きやすい道に出た。どうやら何者かが道を作り、この先に住んでいるらしい。
「誰だか知らんが、人の家に勝手に住み着きやがって。留守を狙った泥棒以上に悪質だ」
文句を垂れながら歩き続けていると、視界が開けた場所に出た。坂の下には、木の家や畑が点在しているのが見える。
人間どもが作る「村」だ。
何やら、村は異様な雰囲気に包まれている。慌ただしく大荷物を抱えた人間が家から飛び出し、村の下(しも)の方へ走って下って行っている。
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