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女性は動きやすくするため靴を脱いだのか、裸足で走っている。足の皮は剥け、一歩ごとに血が地面に付着していた。
痛みに耐えているのか、女性はじっと歯を食いしばっている。
「おい、女。遅いぞ。そんな鈍亀のような走りでは日が暮れる」
ビャコウは女性の背中と足を抱えると、そのまま背中に回して担ぐ。
「な、何するのさっ!」
背負われる格好になった女性が、数秒の間を空けて抗議の声を上げるが、ビャコウは気にせず走り続けた。何しろ、こちらは骨の体に背負われたのだ。人の体の背中である分、快適だろう。
「? この方が圧倒的に速いのがわからんのか」
「だからって、こんな……は、恥ずかしい!」
「騒がず場所を教えろ。上手だか組手だかと言われても、オレ様にはわからん」
なんとなくどちらの方に行けばいいのかはわかるが、はっきりした場所がわかるに越したことはない。あくまでもビャコウは効率を考え行動していた。
ビャコウは女性が示す通りに走り続ける。
畑の間を越え、民家が集まる通りを抜けた。
「あそこだよ! 納屋が隣に立っている家だ!」
その家の前で女性を降ろすと、女性は慌てて家の中へ入っていった。その後、隣の納屋を探し始め、泣きじゃくる幼い少年と少女を連れて出てきた。
「弟と妹さ。こいつら、納屋の中で震えて動けていなかったんだ。ありがとう、あんたのおかげでまた二人に会えた」
安心したのか、女性もその場で一緒に涙を流し始めた。すぐに服の袖で目元を拭うと、ビャコウを真っ直ぐに見る。
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