死霊術士は起きられない

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   それだけ怯えていながら他人の心配ができるとは、大した胆力だとビャコウは思う。 「女、お前はガキ2人を連れてとっとと逃げてしまえ。お前らのような弱者がここにいても、巻き添えを食うだけだ」  逃げるよう促す一方で、ビャコウは一歩踏み出し、唸りを上げる地竜に近付く。  一際大きな地竜の唸りが地面を地震のように振動させるが、ビャコウは一向にお構いなし。腕を組んだまま不敵に笑い、 「寝起きの運動にはちょうどいい。身の程知らずには、この冥獄のビャコウ様が直々にお仕置きをくれてやろう」       *  *  *  双頭の地竜が右の頭で、一口にビャコウを食いにかかる。  ビャコウは腕を組んだままだ。彼の周囲には、白いもやのようなものが渦巻き始める。 「死霊術『怨恨ノ盾』」  渦巻くもやがビャコウの眼前に集まり、薄い円形の盾の形に変わる。頼りなさげに見えたその盾は、地竜の激突を防いだ。  死霊術。  それは、死した生物の魂を操る術である。死の直後ならば魂は元の形を保っているが、時間の経過と共にそれらは形を失い残骸と化す。ビャコウがやって見せたのは、そうした魂の残骸を集め、形を作る術だ。  
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