死霊術士は起きられない

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  「よ、四十年?? まさか、オレ様がこの山に来る前から人間どもが住み着いていたということか? いや、オレ様は死霊山の散歩が日課だった。魔王が視察にきた時もオレ様は完璧に案内をこなした。こんな場所があるなら知らないはずがない!」  ブツブツ呟き始めたビャコウに、エラは若干体を引く。今度は恐怖とは別の理由で。 「……ちなみに、魔王はどうなっている? その配下の四天王は?」 「魔王? そんなもの、もう五十年も前に勇者様に倒されているじゃないか」 「五十年!!!!!?」  ビャコウは驚きの余り、後ろにコロリンと倒れ込む。  仰向けになった状態で、空を仰ぎながら何度も呟いた。 「五十年、五十年、そうか……五十年か」  なんということだ。  自分が復活を渋っている間に、外界では途方も無い時間が流れていたのだ。魔王が討ち取られたということは、その配下であった四天王も無事では無いだろう。  五十年もの時間が経っていたなら、死霊山が素敵な花園に生まれ変わっていたことにも納得がいく。主人を失った山は浄化され、普通の山となっていたのだ。そこに人間どもが移住してきたという訳だ。 「ウィスザーク、リュウセイ、ゲブ、そして魔王リンゲイル……そうか、皆逝ったか」  同僚や上司の名前を呟く。決して相容れない連中ではあったが、この世にいないと思うと寂しい気持ちになる。 「あの、大丈夫かい?」  仰向けになったまま動かないビャコウを心配してか、エラが覗き込む。 「うむ、大丈夫……多分」  ビャコウはゆっくりと体を起こす。その目からは、若干生気が失われていた。  
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