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松明の明かりだけが朧に揺らめく暗黒の空間に、男の笑い声が反響する。
「フハハハハ! よくぞここまでたどり着いたな、勇者たちよ。この死霊山を人の身でありながら登頂したその強さと度胸、褒めてやろう。だが、山を下る必要はない。なぜなら、魔王軍四天王の一人にして最強の死霊術士、『冥獄のビャコウ』様がこの場でお前たちを葬り去ってしまうのだからな!」
声の主--ビャコウは台座の上で腕を組みながら、昨晩練習したセリフを全て噛まずに言えたことに安堵した。
何しろ、早起きして復習しようと考えていたのに、いつものように寝坊してしまったせいでぶっつけ本番に近い状態で挑んだのだ。そもそも練習時でさえ五回に一回しか成功していなかったことを考えれば、これは奇跡に近い。
ホッとため息をつきそうになって慌てて気を引き締めるこのネクロマンサーは、見た目は二十代ぐらいの青年だ。
髪は色が完全に抜け落ちたように真っ白で、瞳はやや黒みがかった紫をしている。顔には爪の跡のように赤の刺青が刻まれていた。
服装は全身を覆う黒いローブに、動きやすい灰色のズボン。そして履き慣れた黒の長靴だ。威厳を演出するためだけに先にドクロがついた杖も用意していたのだが、物置にしまっていたら見つからなくなってしまった。
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