死霊術士は起きられない

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  「……ふっふっふ。ふはははははははははは! 我ながらなんという悪魔的発想なのだ!!」  ビャコウはむくりと体を起こす。さっきまで生気を失っていた目が、今はやる気に満ち溢れていた。  自分や仲間の復讐心がない訳ではないが、それよりも単純に負けっぱなしでいることが悔しいという気持ちが強い。  そう、負けたことは恥ではない。最後に勝てないことが恥なのだ。負けることに甘んじても、負けっぱなしは許せない。 「やることができた。オレ様はここを発つぞ」  素早く立ち上がり、衣服を整え始めたビャコウに、エラは慌てて声を掛ける。 「ちょっと待ちなよ! まだこの村を守ってくれたお礼だってできていないのに、そんなに急に出発することないじゃないか」 「ふん、オレ様にとっては自分の庭を外来生物から守ったようなものだ。誰かに感謝される筋合いなどない」  そう告げてから、ふと、また今後も自分の預かり知らぬ魔物が山に侵入するかもしれないという可能性を考えた。人間どもが住むのはまあ許せる。弱者には慈悲をくれてやろう。しかし、どこの馬の骨とも知れぬ魔物が我が物顔で自分の本拠地を闊歩している姿を想像すると、苛立ちを覚える。 「女、少し待っていろ」  ビャコウは地竜が起こした地震で崩れた小屋の中に丸太が積まれていたのを思い出し、その場へ行った。  死霊術で四本の丸太を運ぶと、霊力を込めて丸太を虎の形の像にする。 「おい、女。この像を村の端に立てろ。この山はもともと多くの死霊が眠る山だった。それらの死霊たちが魔物からこの山を守ってくれるだろう」  
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