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しかし、勇者ご一行はよく流れるようにセリフの掛け合いができるものだ。もしかして、自分と同じように練習してきたのだろうか。
それならば事前に打ち合わせをして「立ち合いは強く当たって、あとは流れでいきましょう」とでも言ってやれば良かったか。
まあいい、所詮は敵同士だ。ここから先にあるのは勝つか負けるか、生か死かだ。
「覚悟はできているようだな。ならば我が力を存分に味わい、そして後悔するがいい」
ビャコウは台座から続く階段を下りながら、勇者たちに向けて告げる。歩きながら背後で白いもやのような死霊たちを増やし、演出することも忘れない。
そしてここからいよいよ決めゼリフだ。
三日かけて配下の魔物達と会議を重ね、ようやく決まった自信作。議論が紛糾したと思ったら何も考えが出ずに沈黙が続くこともあった。眠気に負けて机に突っ伏し、後から配下から嫌味を言われることもあった。
そんな苦難の日々を思い出しながら万感の思いを込め--
「さぁ、黄泉への坂を転がりぇ」
思い切り噛んだ。
* * *
結論から言えば、戦いは敗北だった。
勇者の「不浄を浄化する力」が死霊術を切り裂き、露出女が速さと手数で推してくる
「奥の手」は使ったが、こちらからの攻撃を盾の少女が受け切り、距離を取れば術士の老人の魔法が襲ってきた。
完敗とまではいかないが、一人も倒せなかったことから、圧倒的敗北であったことは間違いない。
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