死霊術士は起きられない

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  (まさか、オレが四天王で一番先に脱落するとはなあ)  ビャコウは地面に転がる自分自身の死体を見ながら、魂の姿でため息をついた。  初めて見る自分の死体は、外傷が少なくまるで眠っているかのようだ。勇者の力は体を傷つけないまま、まるで光が闇を払うかのように自分の命を奪っていった。  報告を聞いた他の四天王三人は自分の敗北を聞いて何を思うだろうか。「奴は四天王の中でも最弱」「魔王軍のツラ汚しよ」とかなんとかゲラゲラ笑うに違いない。まとめて串刺しにされちまえ。 「ビャコウさまー!」  元気な声がして、地下から人型の骨が這い出てきた。この部屋で隠れて戦いを見守るように指示をした配下の魔物のスケルトンだ。  スケルトンはビャコウの死体を眺めると、骨の顔でもわかるようなニヤニヤとした表情を浮かべる。 「いやー、それにしてもいい死にっぷりですねえ。このまま骨になってわたくしどもの仲間になりませんか?」 『うるさい。それより、戦いは報告ができるくらいしっかり見たんだろうな?』  ビャコウが不機嫌な声で尋ねると、スケルトンはカクカク頭蓋骨を縦に振る。 「モチのロンですよ! 勇者の不合理な力、しかとこの目で見ました!」  と、スケルトンは指で丸を作り、頭蓋骨の空洞の前に置く。ビャコウはどこにお前の目があるんじゃいと突っ込みたい気持ちを抑えつつ、 『……まあいい。ならば魔王の城に行って報告してこい。寄り道はするんじゃないぞ』  これがスケルトンにした指示の一つ、そして四天王全員が魔王から言い渡された指令だ。勇者の力を観察し、事細かに報告すること。  魔王がなぜそのような指令を出したのか、その意図はわからない。得体の知れない力をどうにか把握したいという気持ちはわかるが。  
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