死霊術士は起きられない

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  『スケルトンよ、オレ様が出したもう一つの指示は覚えているだろうな?』  ビャコウが尋ねると、スケルトンは首を傾げる。 「ええと……寝室にあるいかがわしい本の処分でしたっけ?」 『違うわ! オレ様の体を棺桶に入れ、復活の秘術の準備をすることだ!』 「はっはっは、ちゃんと覚えておりますよ。それでは失礼して……」  スケルトンは、生き絶えたビャコウの体を拾い上げると背中で背負う。  動かない自分の体が運ばれていく様を見るのは新鮮だ。スケルトンの尖った骨が体に刺さって痛そうだが、それは考えないことにした。 「それにしても、ビャコウさまはどうしてセリフや演出に拘るのですか? 敵同士だから問答無用で襲い掛かればよいものを」  ビャコウの体を運びながら、スケルトンが問う。ビャコウは魂の姿で、やや苛立たしげな口調で答える。 『……魔王のバカが好きなんだよ、そういう臭いの。おかげで四天王の会議は台本の読み合わせ会だ。四天王同士が方向性の違いから言い争って、お互いに術やら技やらを出し合いかけたところを魔王が一言で止めるってところまで台本通りなんだぜ? やってられねえよ』  演出も無駄に凝っており、最初は室内が真っ暗だが四天王の誰かが話し始めるとその場所から火が灯っていくなんてこともあった。  なぜそんなこだわりがあったのか、本当にその意図はわからない。  
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