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そうこうしている間に、山の洞窟に隠した部屋に着いた。スケルトンはビャコウの体を部屋の中央に置いた棺桶の中へ入れる。
魂の姿のビャコウは咳払いをすると、
『それでは、これより復活の術へ移る。お前はもう報告の任務に出発してもいいぞ』
「はあ。それにしてもすごいものですねえ、ネクロマンサーの術は。死者を蘇らせることもできるんですから」
スケルトンの言葉に、ビャコウは首を横に振る。
『こんなことができるのも、魂の形をはっきりと知覚できている己自身が術の対象だからだ。他人に施しても、ゾンビのような動く死体しか生まれない』
術のためには数ヶ月の準備も必要だった。手軽にできるようなものではないのだ。
「復活まで時間はどれくらいかかるのですか?」
『まあ、早くてひと月くらいだろうな。そのことも魔王たちに知らせておいてくれ。お前らが追い詰められたあたりで颯爽と登場してやるからなと』
「はっはっは、了解しました。それでは、わたくしは出発いたします。お元気で、ビャコウさま。決して寝坊してはなりませんよ」
『余計なお世話だ。お前こそ、人間どもに見つかるヘマはしてはならんぞ』
洞窟の出口まで歩き出したスケルトンだが、途中で立ち止まり振り返った。
「ビャコウさま……この死霊山はどうなるのでしょうか」
『さてな。勇者どもに引っ掻き回されたせいで、魔物は死に、死霊はことごとく浄化されたからな。元のようにとはいかないだろうな』
「そうですか。それは寂しいことです。ここは……紛れもない、みんなのお家でしたから」
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