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スケルトンは先に逝った仲間たちを思い返すように、斜め上の虚空を見上げた。
「ビャコウさま。あなたはわたくしのような弱い魔物にも役割を与え、価値を見出してくださいました。あなたに仕えられたこと、わたくしは誇りに思います。これまでも、そしてこれからも。ではどうか……お元気で」
いつも陽気だったスケルトンに似つかわしくない、寂しげな声だった。そのまま骨が軋む音を立て、スケルトンは洞窟を後にした。
残されたビャコウの魂は、拍子抜けしたようにスケルトンが去った後を見た。
『なんだ、あいつは。オレ様は復活するというのに。まるで今生の別れのようだったな』
気を取り直し、ビャコウは絶命した己の体を見た。勇者により手酷い一撃を与えられているが、術を仕込んだこの場所ならば徐々に体も回復していくだろう。それに並行して、一度離れた魂をもう一度体に馴染ませる作業をする。
ビャコウは霊力を集めて自身の魂を固定し、屍の中へ飛び込んだ。
逆流する川の中にいるかのような感触がビャコウの魂を襲う。しかしビャコウは力を入れ、その場に踏みとどまった。
やはり一度分離した体と魂を一つにすることは並大抵のことではない。だがしかし、自分は最強のネクロマンサーだ。やってやれないことはない。
『フハハハハ! 見ていろ、勇者よ。オレ様は復活するぞ。そしてその時こそ再戦だ。次は絶対に負けん。この世の地獄でまた会おう!』
負けたことは恥ではない。
最後に勝てないことが恥なのだ。
負けたことに甘んじても、負けっぱなしを許してはならない。
そうしてビャコウの自我は、荒れ狂う濁流の中へ吸い込まれていくのだった。
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