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「竿谷さーん、お仕事の依頼ですよ! 可愛い声の女性からです!」
滅多に鳴らないオフィスの電話。
依頼の電話より悪戯電話のほうが多いので警戒して取らなかったが、まさかの依頼の電話だった。
助手の玉袋美咲から受話器を受け取った俺は、なるべく渋い声で話す。
「竿谷恭介です。本日はどういったご依頼ですか?」
俺がそう問いかけると、依頼主である女性は震える声で話し始める。
「3日前に引越しして……一人暮らしをしているんですが、誰か居る気配がするんです」
「なるほど、もしかしたらそこは事故物件ですか?」
「いえ、そんな話は不動産屋から聞かされてないので、多分違うと思うんですが……」
「ほうほう。しかし、事故が起こってからその後1日でも誰か住めば事故物件と告知しない不動産屋もありますからねぇ。もしかしたらその類の物件かもしれませんよ? まぁなんにせよ、今から見せて頂きましょうか?」
「はい、お願いします。名前は伊瀬谷茉莉花と言います。住所は……」
「あっ、初めに申し伝えておきたいのですが、私には祓える悪霊と祓えない悪霊が居ます。霊視させて頂いて祓えない悪霊なら依頼はお受けできませんが、それでもよろしいですか?」
俺がそう問いかけると、伊瀬谷は不安混じりの声で「構いません」と告げた。
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