悪霊にも変態は居る

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住所と連絡先を聞いた俺は受話器を置き、机の中からロープを取り出した。 昔は人に快楽を与える為に使ってきたロープだが、今は除霊道具に進化している。 ロープには細かい字でお経が書き込まれており、禍々しいオーラを放っている。 「竿谷さん、今回の悪霊、変態だったらいいですね」 「そうだな。出来れば変態であることを願う。まぁしかし、悪霊の3割くらいしか変態は居ないからな。去年祓った露出狂の悪霊みたいに祓いやすい奴だったらいいんだが」 同業者【除霊師】が聞いたら耳を疑うような会話をしながら、俺はオフィスの鍵を閉めて伊瀬谷の住むアパートへ向かった。 車で4時間。 想像以上に遠かった。 依頼を受けた事を軽く後悔しながらエンジンを停止する。 「竿谷さん、この交通費も依頼主に請求するんですよね? ガソリン代とETC合わせたら往復1万は超えますよ?」 「もちろん請求するさ。悪霊が変態だったらな」 キメ顔で俺がそう告げると、玉袋は大きな溜息を吐きながら助手席のドアを閉めた。 車から離れてアパートに歩いている途中で、電柱にケツを擦り付けている霊に遭遇する。 禿げたオッサンだ。 パンツ一丁でひたすらケツを擦り付けている。 もしかしたら伊瀬谷を苦しめているのはコイツか? と思いながら近づくと、その霊はハッとした顔で固まり、ケツの動きを止めた。 どうやら、見える人間に会ったのが初めてらしい。
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