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「おい、お前……あのアパートに入った事あるか?」
『えっ、いや……えっ? えっ?』
会話を仕掛けた事があまりにも衝撃だったのか、禿げ散らかした霊は『え?』を連呼している。
「もう一回言うぞ? あのアパートに入った事はあるか?」
『な、無いズラ。ワシ、ただこの電柱が気持ちよかったから、ケツを擦り付けていただけズラ……』
どうやら伊瀬谷の依頼とは関係の無い変態らしい。ただ、語尾が怪しいので霊ではなく、物の怪の類かもしれない。
いくら変態と言えど、物の怪と言えど、人に迷惑を掛けていないモノを黄泉の世界に送る事は出来ない。
「あんまり擦りすぎるなよ」
俺はその言葉だけを残し、アパートに急いだ。
アパートに入った瞬間、身体に寒気が走る。どうやらこの中に居るのは相当強い念を持っている悪霊らしい。
変態じゃなかったら、死ぬのは俺の方かもしれない。
「竿谷さん、この感じ……かなりヤバくないすか?」
「あぁ、ポストの横でコレだからな。とりあえず、変態である事を祈るばかりだ」
エレベータに乗り込んだ瞬間、チャックから男性のシンボルを丸ごと出している中年男性に遭遇する。
「キャッ!」
玉袋は顔を覆うふりをしながら、しっかりとそのイチモツを確認している。
俺にはその男のイチモツが玉袋の後頭部でちょうど見えない。
男は俺の前を歩く玉袋しか見えていなかったのか、俺の存在を確認するなり慌ててチャックを閉めて逃げていった。
「竿谷さん、助けてくれてもいいじゃないですか! 嫁入り前の乙女にはショックが大きかったんですけど」
「嘘つけ。玉のシワまでしっかり確認していたくせに猫かぶってんじゃねーよ。お前も分かってるだろう? 俺は人を縛り付けたりはしない。俺が縛るのは悪霊だけだ」
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