悪霊にも変態は居る

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「ぬ、脱ぎました」 伊瀬谷の声に合わせて脱衣所に入ると、二十代後半と思われる男性が全裸で洗濯カゴに頭を突っ込んでいた。 犬神家並みのダイブを見せるその男の悪霊は、伊瀬谷の脱ぎたてのパンツに顔を埋めていた。 「出たな。悪霊」 俺はそう呟きながらロープに霊力を込め、手際良く悪霊の身体にロープを巻き付けていく。 何が起こってるのか分からない伊瀬谷は、きょとんとした顔で俺の背中を見つめていた。 玉袋はスマホを弄りながら、除霊が終わるのを待っている。相変わらず舐めた態度だ。 男の首にロープを掛けるのに合わせて結び目を作り、股の方へ勢いよくロープを回す。 目にも止まらないスピードで結び目にロープを通しながら脇の下を潜らせ、背後で一気に縛り上げた。 『な、何だこれは!? クソ、誰だ? 俺の楽しみを邪魔する奴は!』 悪霊はそう叫びながら暴れ回るが、亀甲縛改(きっこうしばりかい)によって暴れれば暴れるほどロープは食い込んでいく。 伊瀬谷にはロープが宙に浮いているように見えており、「な、何が起こっているんですか?」とプチパニックを起こしている。 「伊瀬谷さん、やはり此処には悪霊が居ました。俺の専門分野である、変態の悪霊がね」 「あ、悪霊にも……変態って居るんですか?」 「ええ、みんながみんな白い服を着て髪の長い女の幽霊とは限らない!ゲイの霊も居ればバイセクシャルの霊もいる。そして、変態の霊もね!」 伊瀬谷にそう告げた俺は、悪霊を黄泉の世界へ送る最後の仕上げに取り掛かる。
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