悪霊にも変態は居る

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『頼む……俺はもう終わりだ。茉莉花に伝えてくれ……』 やはりこの悪霊は雅治らしい。 「何だ? 何を伝える?」 『お、俺が一番好きなパンツは……赤い花のあしらわれたヤツじゃなく……黒いシルク地の……Tバックだったと……』 その言葉を最後に、雅治は粉々に砕けて黄泉の世界へ送られた。 静まり返る脱衣所。 俺の後ろで蹲って震えている伊瀬谷に除霊が終了したことを告げる。 「か、彼は……最後に何て言ってましたか?」 その言葉を受けた俺は床にポツンと落ちた伊瀬谷のパンツを見つめながら言葉を紡ぐ。 「突然死んでしまって申し訳ない。寂しい思いをさせてすまない。君には幸せになって欲しいから、前を向いて歩いて欲しいと……。雅治は……そう言っていた」 リアルに雅治が残した言葉を伝える訳にはいかない。 相手の幸せの為に、嘘が必要な時もある。 アパートを後にした俺は、スマホゲームに夢中の玉袋と一緒に車へ戻っていく。 駐車しているすぐ側の電柱には、未だにケツを擦り付けている霊が居た。 俺はそいつを横目に見ながら車に乗り込む。 玉袋は眠たそうに目を擦りながらシートを倒し、「竿谷さん、今気づいたんですけど、お金……もらってなくないすか?」と呟く。 「あっ……」 玉袋の言葉に固まったものの、今更引き返して請求するなんて格好悪いこと出来ない。 俺は力強くアクセルを踏み込み、新たな依頼が舞い込む事を願ってオフィスに向かう。 4時間掛けて。 Fin
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