第1章

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ーピピピピッ 『ふぁぁ~』 ググッと伸びをする。 目の前の濡羽色が自分の動きに合わせて揺蕩う。 自分の四肢をフローリングに着けた拍子に、ベッドがギシリと音を立てる。 ーそろそろ替え時かな。 顔を洗うため洗面所へ向かう。 ひょこりと洗面台の鏡を覗き込む。 そこには髪色同様に濡羽色の睫毛にタレ目で黒目がちの瞳がある。 その瞳の下には泣きぼくろがあり、よく昔は女の子に間違われたっけ。 自分の容姿にあまり不満を持ったことはなかった。 まぁ今となって彼女が欲しい身としては、女性に恋愛対象と見られなくて嘆いているけれど。 朝から憂鬱になりつつ、昨日スーパーで買った食パンをもそもそと食べ、暖かいココアを飲む。 本当はコーヒーを飲んでいた方が大人の男を演出できるのだろうが、未だにコーヒーを苦く感じ、飲めないのが現状だ。 元々甘いものが好きではあったが、会社に勤めてからより一層甘いものを好むようになったような気がする。 そしていつものように朝のテレビ番組を見るために、リモコンに手を伸ばし、テレビをつける。 「では、今日の星座占いでーす。 今日最も運勢がいいのは…みずがめ座のあなた!」 なぜか毎日欠かさず見ている星座占い。 心の中で握りこぶしをつくりガッツポーズする。 なんか今日はいいことありそうだと、根拠もないが、少し嬉しくなる。 ふと時計を見てみると、 あ。もうすぐ家出なきゃ。 少し焦りつつ、兄から就職祝いで貰ったスーツを着て、ジャケットを羽織る。 鞄をもち、電源、電気を消したことを確認する。 革靴をトントンと履いてドアノブを回し、鍵を閉める。 《パタン。ガチャ。》 また今日もいつもと同じ1日を過ごすのだろう。
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