第1章

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僕の働いている会社は、大手広告会社だ。 一応、大手の企業なのでそこそこお金を稼げている。 だから、そこまで就職に関して不満はないのだが、1つだけ少々納得のいかない点がある。 それはいかんせん僕の家から会社まで遠すぎることだ。 当初先ほど出てきたマンションは、不動産屋さんのビラに “駅から徒歩3分!” と書いてあったはず。 しかし、実際歩いてみると15分以上かかる。 15分歩くくらいいいじゃないかって思う人もいるだろう。 そう言えたらいいんだけど、その後に満員電車に乗ることを想像すると、正直なところ、徒歩では体力を消費したくない。 それに、元々体力に自信もなく、運動に関することは苦手だ。 このことを会社の同僚に話していたら、 「じゃあ、拾っていってやろうか?おれ、車通勤だし。」 とかなりいい話をもらったのだが、流石に悪いと思い、泣く泣く未だに電車通勤をしているのである。 そう回想している間に、いつのまにか最も憂鬱な満員電車のプラットホームに着いていた。 なぜ、そんなに憂鬱かというと、やたらと人の体温を感じるからである。 別に特別潔癖症なわけではないが、電車に乗ると、普段触られないようなところに人の体温を感じるからである。
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