第1章

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そして今に至る。 もう完全に壁にぶち当たっている。 “パサッ” 振り返ると、志貴がいた。 彼の名前は、桜庭 志貴。 彼は、同僚で唯一、同じ部に配属された者だ。 志貴は、179㎝という高身長なため、丸いイスに座っている僕は、頑張って首を伸ばして、見上げなければならない。 どうやら、さっき知らない内に、落としてた資料を拾ってくれたようだ。 「あんま根詰めるなよ。」 そう言って、僕の隣のイスに座る。 『ん。』 「出演者のこと悩んでるのか?」 『…まだ決めかねてて。』 「でも、そうも言ってられないだろ?橘さん直々に言われたんじゃ、そろそろ期限が迫ってるってことだろうし。」 『そうなんだよね。』 またそこで考え込む。 「…成宮。仮定の話なんだけど、1つの案として聞いてほしい。 もし、俺が成宮の立場だったら、新人の採用は諦める。 その代わりに、“爽やかな”イメージといったら、若年層に人気が高い、俳優やアイドルを起用するかな。 それだったら、プロダクションに入っている人が多いし、成功すれば今後そのプロダクションと繋がりがもてることもあるかもしれないからな。」 …なかなかいい案。 やっぱり若年層を狙うべきか。 『俳優…。』 ふと、中学時代に友人がテレビに映る俳優を見ながら、呟いた言葉を思い出す。 “俺もこれ飲めば、この人みたいにイケメンになれっかな~” 当時は馬鹿なのかなコイツ、と呆れていたが、冗談でもそういう思考を彷彿させることによって、視聴者にインパクトを与えられることは確かだ。 こう考えると、改めてイメージモデルというのは重大であろう。
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