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「 ひかる~レジ 」
「 は~い!今入りま~す 」
男かそれともハスキーな声の
女?
コンビニのレジから斜めに離れたコーナーで中性的な声が応える。
なぜかその声が気になった俺はレジ前のカップラーメンの棚から声のした方向に目を向ける。
「 ひ、か、る!」
通路に積まれた納品をひかると呼ばれた男が捌いてる間に客がレジ前に溜まる。
夕方6時を回ると学校帰りの子どもや仕事帰りの職人で混むレジのカウンターの脇から急いでレジに飛び込む若い男。
男じゃないな、まだ高校生ってところか……
その子がレジを開けると待ちかねた客のカゴがどんとカウンターの上に乗っかる。
コンビニの縦縞の制服から出ている腕は少し日に焼けて、会計のため伏せた面差しは誰、か、に似てる……
濃いめのブラウンの髪は襟足で僅かに癖っ毛なのか男にしては華奢な頸に纏わり付いている。
あの店長もそう言えば、彼の横顔に食いつくようにねっとりとした視線を暇があれば這わしてるよな。
キモいんだよ。
ここは俺のアパート近くのコンビニ。
あの子のシフトはだいたい夕方5時から高校生ならおそらく夜は10時には上がるだろう。
入り口のガラス扉に貼ってあるチラシに記された時給はそれなりだが、
週に5日はいるから毎週20000円にはなるはずだな。
人の稼ぎを換算してもなんの面白みもないが、
バイトやパートにはブラックざんまいのこの店の店長が、あの子が入った当初はやけに手厚く教えながらまとわりつくのが目についてたんだよな。
おい、親の店で店長やってるこのだらけた男は本当に恥ずかしいやつだ。前は夜滅多に出てこなかったくせに最近ではオールシフトがあの子と一緒だよ。
おまけに名前呼びで、他の奴らには全部苗字呼び捨てなのにな。
俺の職場はここからチャリで10分ほど行った焼肉屋だ。
ちょうど間にあるこの24時間のコンビニは朝晩仕事場の行き帰り、休みの日にもで、毎日殆ど世話になってる。
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