大統領の悩み

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3時間後、ポポロン大統領は大統領執務室にいた。 無数の取材カメラが世紀の瞬間を捉えようと 身構えている。 ローア陸軍大将がジュラルミンケースを手に 執務室に入って来た。執務室の緊張が高まり、 カメラのフラッシュが瞬く。 バチンバチンとケースの留め金が外れる音がした時、 ようやくポポロン大統領の迷いは吹っ切れた。 「よし、決めた!」 赤い勝負ネクタイを締め直したポポロン大統領が 右手の人差し指を置く。指紋認証が終わり、 核ミサイルの発射を命じる最後の「YES」「NO」が 画面に表示された。 「ポポロン大統領、発射のご指示を」 ローア大将の呼び掛けに「うむ」と頷く。 愛する妻と、娘のシャロンの顔が脳裏によぎる。 深呼吸をした後、ポポロン大統領は「YES」を押した。
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