SCENE1

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 リーダーの言葉にあたりを見回してみる。大ちゃんは俺の腕枕だし、健司は相変わらず大型犬の昼寝状態。ったく、いつまで純さん枕にしてやがんだよ、健司のヤツ。頭の針、全部抜いてやろうか。 「凌太くうん、髪撫でて欲しいなあ」  大ちゃんのわざとらしい猫なで声。リーダーの大げさなため息。  大ちゃんはリーダーをからかうのが大好きだ。いちいち真面目に反応するのが面白い、ってのは、俺も同感。  俺はリーダーの苦い顔を横目で見ながら、大ちゃんの髪に手をかけた。一回すっと撫で下ろすと、胸にもやもやした感覚。なんでか手が、大ちゃんの髪を拒む。  おかしい、どうしちまったんだ? よく手になじんだ感触と違うからだとしたって、妙だ。  そりゃもちろん俺の手だって、純さんの髪撫でてた方がいい。カラーとかしてない漆黒の純さんの髪は、柔らかくてつやもあって、さわり心地いいし。  俺と純さんは、もうつきあい始めて三年ぐらいになる。その頃はまだ、みんなで芝居を続けるかどうかなんて、決まってなかった。俺は大学二年生で、純さんが大学を卒業する前に告っとかなけりゃ、っていう、ありがちなタイミングだった。  あの時のことは、言葉にできないし、したくない。ずっと大事にしときたい。  実際俺は、純さんとのことは、口に出したことがない。それが、誰とは言わない話だとしても。俺の知る限り、それは純さんも同じだった。  メンバーには絶対バレたくない。だけど、一生隠し通すなんて無理だ。バレた時の俺の覚悟、それはなによりも純さんを優先する、ってこと。もちろん、そんなのは絶対純さんの前では出さねえけど。  嫌悪感に近い感情をごまかすように、あの時のことを思う。自然と純さんの方に流れていく視線。ここからは、黒のジャージを着た純さんの膝から下しか見えない。  マジヤバイ。思い出すほどに、拒否感がどんどん募ってく。適当な手の動きは、もう撫でてるとは言えないほどになる。
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