SCENE1

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 ああ、今日は純さん、俺んとこ来るかな。  つい回想が飛んで、純さんの浅黒い肌を思う。髪と同じくすべらかな肌。回想がエッチな方へエッチな方へと流れるのは、男の性ってヤツだ。  最近特に頻繁に、純さんが俺んちに来るようになった。初の全国ツアー、初のドラマレギュラー。二つ重なって超忙しいはずなのに、純さんはその合間を縫ってくる。  稽古中の雰囲気は、正直最悪。五人それぞれのとにかく芝居を面白く、って気持ちがぶつかりあって、大ゲンカが勃発。ぶっちゃけ「解散」の文字すら頭をよぎったぐらいだ。  しかも純さんは主演で、かなりの長ゼリフもある。なのにホンは変更変更で、たぶんそれが相当なストレスになってたんだろう。  その上、田舎もんでろくに映像の仕事なんてしたことなかったのに、いきなりキー局のドラマ撮影現場に飛びこむことになった。昔からテレビで見てきた俳優さん達との共演で、実力の差を見せつけられたり刺激を受けすぎたりで、純さんの精神状態はもうごっちゃごちゃのぐっちゃぐちゃになってたらしい。  純さんは基本的に、一人を好む人だ。でも、やっぱりつらくなれば人のぬくもりを求めたくなるらしい。純さんは出会った頃から、俺の都合と迷惑だけはまったく考えない。らしいっちゃ、らしい。  俺からは、ほとんど誘わない。来たらたいていは部屋に入れるけど、たまに断る。かったるくてカンベンして欲しい時だって、当然ある。がっかりして帰っていく顔が見たい時もある。  もし今夜来たら、どうしてやろう。そう考えたらますます妄想が走り出して、下半身がむずむずしてきた。思わず股間を押さえる。 「いてっ」  がすん、と俺の手が大ちゃんの頬を直撃。 「あ、ごめん大ちゃん」  大ちゃんきっかけでエッチなこと考えてごめん、も含めてみた。 「俺、髪撫でんのやめていいとは言っとらんぞ」  あーはいはい、分かりました。ホント俺様なんだからな。なんて思いつつ、仕方なく髪を撫でるのを再開しようとした。  でも俺の手はやっぱり、大ちゃんのためには動きたがらない。原因不明の胸のもやもやも消えない。  気を紛らわすためにも、妄想は続く。  大きくて深みのある、つねに潤んでいるような瞳。その瞳で、じっと問いかけるように俺を見る。そんな純さんを思う時、浮かぶのはいつも半裸の純さんだ。
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