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「修行は楽しいものではありません。ただ、拷問に耐えることに多少の達成感を感じることもあるかもしれません」
「ふむ」
その獄卒は、キタと話すのがだんだん面白くなってきた。
獄卒は人間と話すのは、初めてだった。他の死人はほぼ悲鳴しかあげないのだから当然である、もちろん、地獄の獄卒なのだから別に人間の悲鳴や恐怖の声ばかり聞いていてもストレスを感じないようにできているが、人間にも変わったやつがいるのだから獄卒にも変わったやつはいるのである。
「しかし、死人にとって責め苦に受け取り方に差があるのはやっぱりあんまり納得できないなぁ」
「仕方がありませんよ、人間はそれぞれ違うのです。感じ方も違います」
「お前は、この罰に納得しているのか?何をした」
「納得はしていませんが、著しく不公平というわけでもないと思います。私は人を殺しましたし」
「その人を殺したことを満足しているのか?」
「・・さぁ、それは微妙です。私の仲間たちは、そうすることが世の中のためだと信じていました。私もそう思っていましたが、私にはもう一つの目的もありました。人を殺してみたかったのです。殺すなら力弱い一般人を殺すよりは権力者を倒す方がいいと思った。狙ったものの中には、直接手を下して人を殺さないまでも、悪辣なやり方で権力の座についたものもいましたし」
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