第1話「お約束?」

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 それより、なんで引っ張るの?おやつほしいの?わかんないけど時間がない。今日も仕事なのだ。  わんこをくっつけたまま、アパートを目指す。  もう一袋出さなきゃ。生活精算して、幸せ掴まなきゃ。せっかく始めた婚活、頑張れわたし。  バラ色の新生活を妄想していたら、不意に、わんこが引っ張る力が強くなった。  え、なに?って思った時は、すでに炎と爆音に包まれていた。  最後の記憶は、炎上するアパート。 (ああ、証拠隠滅できなかった)  最後に浮かんだのがそれって、やっぱりわたしだめだわ。わんこ、ごめんね。巻き込んじゃったかな?  そこで、意識が飛んだ。    気がついたら、知らない場所だ。あ、これ死んだな、わたし。こういうのって、白い壁の部屋が定番だと思うけど、なに、これ?  夕陽の挿す広い部屋。並んだスチールデスク。木造の壁と窓枠窓枠。窓口奥の初老の男性は、白髪で少し着古したスーツ姿。手には書類の束。まるで昭和の村役場。 「土田安奈さん?」 「あ、はい。」  書類を持った男性から、不意に名前を呼ばれる。 「手続き済ますから、必要事項記入して。」  一昔前のお役所のような、事務的な感じ。とりあえず返事しとこう。 「え、あ、はい。」     
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