起き抜けの悪夢

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 あっ、そう? 僕のこと知らない? じゃあ必要なことだけお伝えしようか。  ひとつ、僕は一人暮らしです。残念ですがサプライズ好きの恋人も友達も家族もいません。あ、友達は別にだけど恋人なら随時募集してるからご希望のお嬢さんはあとでメッセージ送ってね。待ってまーす。  えーと、ふたつめ。僕は夢遊病でも記憶喪失でもありません。まあ正直自分で気づけってのも無理があるかもしれないけど、自分ではそんなことないって思ってるし今は離れて暮らしてる家族だの数少ない腐れ縁(非情にも男性です)からも指摘されたことはない。記憶に関してはむしろ、普通のひとよりちょいとばかりよかったりするんじゃないかなって自分では思うんだけど。でも証明はできないし、する必要もないからまあ今はとりあえず一般レベルってことにしておくね。  みっつめ。僕の家にそもそも封筒はない。このデジタル社会に私用封筒なんてないよ。第一、今封書って一通いくらで配達してんのかすら分かんないし。僕が子どもの頃は確か六十二円……おっと、あんまり言うとオジサン扱いされそうだな。あ、ちなみに枕元のこいつには切手は貼ってないようですね。よって唾液からDNAの採取は無理、と。まあそもそも普通のひとがイマドキ切手をぺろり、なんてしないと思うけどね。  それからよっつ。寝る前にはもちろんこんなものなかったし、ついでに言うと僕の枕元はポストなんかじゃない。おまけに今は冬ですらないし、ありもしない煙突からあわてんぼうのサンタクロースが家宅侵入したなんてこと、ちょっとあるとは思えないんだよね。  あとまあおまけで、いつつめ。僕は忍者でもないし矢文なんて送りつけてくる変人に心当たりはない。さらに言うと要人とかの類でもないしまあ見て分かるとは思うけどアイドルとか俳優ってわけでもないしね。ほんとに誰から何の用事なんだろうって思うんだけど。
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